石川県の金沢市立西南部中学校で開催されたPTA主催の文化祭「せいなん祭」にて、恒例のルービックキューブ教室を出展しました。11月3日文化の日、毎年同じ日に行われています。今回はその実施レポートをお届けします。
"晴れ"排出率の低さに定評のある北陸のお天気ガチャですが、当日は肌寒いながらもSSRの快晴を引き当てました。
画像(掲載許可取得済) : イベントレポート 金沢市立西南部中学校 西南祭でのキューブ教室 | tribox
こちらは2017年のイベント時の様子です。昨年までは校舎内の教室の1つを会場として使わせていただいており、回を追うごとに増え続ける参加者に嬉しい悲鳴をあげつつも、すでに飽和状態目前でした。会場に来ても空いている席がなく、配布用キューブと攻略書だけ受け取って帰ってしまう参加者もいたとかいなかったとか。
そんな状況を打開すべく、今回はPTAの方のご厚意で体育施設の一角をお借りできることになりました。収容可能人数は従来の倍ほどとなり、机の数を増やしても通路にゆとりができるほどに。
増えたのはキャパシティだけではありません。配布用キューブも攻略書もこれまでにない量が用意されました。PTAからの予算援助もいただきつつ、キューブがのべ600個以上、攻略書も同数程度が運び込まれる様子は圧巻です。2カートン240個入りの箱なんてなかなか見れません。
「配布物が足らず、もらえない参加者が出てくる事態は絶対に避けるべき」という考えの上で用意された数とのことで、なるほど余剰分は来年に回せばいいだけ、といえど結構な額になるはずです。北陸支部すごい。
ちなみに配布されたのは、北陸支部内の一部でチャーハンと呼称され揶揄、もとい親しまれている『QiYi QiHang』でした。
では、各企画ごとに詳細を見ていきましょう。
立体パズル展示スペース
拙宅で眠っている私物の立体パズルに日の目を見る機会を与えるべく2年前に発案し、それ以降好評のため続けさせていただいている企画です。昨年からは私の負担を減らすため、北陸支部メンバーでそれぞれ少しずつ持ち寄る形になりました。
展示パズルの選定
展示するものは【WCA公式競技パズル全種 + 見て面白い・触って面白い変わり種 + ハロウィンっぽいもの】を基準に選定しています。今回用意した変わり種は以下の21種でした。各リンク先は原則展示したパズルそのものの商品ページを記載していますので、すでに販売終了・リンク切れとなっている場合があります。ご了承ください。
- 1x1 (19mm & 25mm)
- 4x4 Windmill
- 8x8
- 9x9
- 11x11
- Calendar Cube (3x3 & 7x7)
- Dino Cube
- Fidget Spinner 3x3x1
- Floppy Ghost Cube
- Gear Cube
- Halloween Cube
- Ivy Cube
- Latch Cube
- Metallized(Metalised) Egg 2x2 (Red & Gold)
- Mirror Blocks
- Penrose
- Pyraminx Duo
- Tower Cube (2x2x3)
- Void Cube
1x1や超多分割系など、見てすぐにルービックキューブの派生だと分かるものに飛びつきやすい傾向がありました。一時期流行したフィジェットスピナー(ハンドスピナー)とScramble Cubeが融合したFidget Spinner 3x3x1も非常に人気だったようです。Pyraminx Duoにどハマりして「これ欲しい!これ欲しい!」と興奮気味に連呼していた参加者もいましたが、残念ながらこちらは絶版品。気の済むまで遊んでいただきました。
先日"買っちった"ばかりのGiiKERも用意していたのですが、精密機器であることや、参加者がのめり込みすぎて本来の企画の妨げになり得るなどの懸念があったためやむなく当日に却下しています。
展示用台紙
また、展示中にパズルが混ざらないよう1つ1つに台紙を用意しました。ただ単にパズルの名称を書くだけでは面白くありませんので、薀蓄を込めた一言コメントを入れたり、WCA公式競技パズルには最新の日本記録・世界記録を付記したりなど情報を盛り込んでいます。特に後者を見て驚嘆の声をあげる参加者が多く、やはりパズルを目の当たりにし、同時に具体的な記録を参照できるのは大きいようです。
以下リンクにて、当日に使用した台紙のPDFファイルを公開していますので、よろしければご覧ください。参考にしていただくのは構いませんが、無断複製・無断使用等はご遠慮くださいますようお願いいたします。
しれっとtriboxの宣伝に1枚割いていますが、ステマではありません。アクセスしてくれた方はいらっしゃるのでしょうか。
なお今回は参加者が触れた11x11が大きくpopしてスタッフが1人修復に駆り出されたり、無理な力がかかって内部パーツが外れ、回転に支障が出たまま放置されたパズルが片付け時に見つかったりなど、細々とアクシデントがありました。これまでそのようなことは一切なかったため安心しきっていたのですが、やはりフリーエリアにする以上ある程度のリスクは避けられないと再確認する機会にもなりました。いくら注意書き(上記PDFファイルを参照)を入れても、初めて見るパズルへの好奇心には抗えないですね。
キューブアート
こちらも恒例の企画となりました。
毎年撮影スポットになるキューブアートのデザインを今回も私に一任していただいたわけですが、どうにも思い浮かばずデザイン作成は難航。PTAの担当の方から「せいなん祭」のロゴを使ってはどうかというご提案もいただいていたのですが、ロゴに余白が多くキューブアートの魅力を生かしきれないと判断し、勝手ながらこちらも断念。しかし代案があるわけでもなく八方塞がりの状況に頭を抱えていたその矢先、以前Twitterで見かけたとある作品を思い出しました。何でも記憶に留めておくものです。
絆から生まれた愛。#アンビグラム pic.twitter.com/ukZwAcUH1y
— いとうさとし (@itousatosi) 2018年1月11日
昨年は「せいなん祭」のテーマとされた【絆】の文字をキューブアートデザインに採用したため、1年越しのグレードアップ版として最適であろうことと、何より異方向から楽しめるキューブアートは見たことがないということで、すぐに作者の方へ作品利用の申請をさせていただきました。
作者であることば漢字創作家のいとうさとしさんは、テレビや雑誌等で度々紹介されている著名なアーティストです。私のような一個人が申請などしていいのだろうか...と思いつつメールをお送りしたところ、即日で快諾のお返事をいただいてしまいました。
表計算ソフトの新しい使い方。作品をもとにキューブアートの形になるようピクセル化します。当日の設計図兼作品紹介用の掲示として使用しました。
書きながら思いましたが、周囲の数字は両方向から数えやすいよう昇順降順共に記載したほうがよかったですね。想像力不足でした。
縦14個、横15個の計210個を開場前にスタッフ総出で並べて完成したものがこちら。今回初めて制作途中に倒壊し、キューブの雪崩が起きました。厚紙の補強で弥縫策を講じましたが、今後のことを考えると何か固定器具を用意するべきなのかもしれません。なお使用したキューブには北陸支部が所持するものに加え、株式会社メガハウス様からお借りしたルービックキューブが含まれています。
会場内で一際目立つキューブアートは、人を惹きつける招き猫になるとともに、ここがルービックキューブ教室の場所であることを示すメルクマールにもなります。今回もその役割をしっかり果たしてくれました。首を傾げながら興味津々に見つめる参加者の姿を目にし、私の喜びもひとしおです。
デザイン原案をご提供いただいたいとうさとしさんに、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。他の作品はホームページより閲覧できますので、ぜひ訪問してみてください。
ルービックキューブ教室
さて、以上はあくまでサブ企画、メインはここからです。
キューブアートや大量の配布キューブの集客効果は目覚ましく、11時開場にも関わらず10時過ぎ頃にはぞろぞろと人が集まり始めました。スタッフは準備中でしたが、パズル展示スペースのおかげでフライング入場した人たちも退屈しなかったようです。
開始とともに大盛況
トップと同じ写真ですみません。教室が始まると絶え間なく参加者が訪れ、撮影どころではありませんでした。こちらはレクチャー中にささっと撮らせてもらった1コマ、ちょうどデイジーメソッドの花びら作成を頑張っているところですね。
写真でお分かりいただけるように、この時は8名の参加者をスタッフの私1名が担当しています。これが人数不足に悩む北陸支部の辛いところで、会場が広くなったために1グループに入るスタッフが1,2名になってしまいました。
幸いだったのは参加者同士が同じ中学校の生徒であり、仲良しグループでの来場がほとんどだったことです。グループでレクチャーしていれば人によって必ず進度に違いが出てきますので、理解の早い人は講師側に回って友達同士で教え合うように促しました。
スタッフが1人しかいない場合は全員の進度を揃えていかないと収拾がつかなくなります。理解の早い人は自分でどんどん先へ進んでしまう傾向があるようですが、それを良しとしてやらせるのはこの場合悪手のような気がします。『人に教えることで理解が深まる』とはよく言ったもので、キューブでもそれは例外ではありません。この日は新しいステップに進んだ時だけ私がしっかり解説をし、理解できた人が出てきた時点で教え合いに切り替えつつ進行しました。面白いことに友達同士のほうが忌憚のない指摘が飛び交うためか、結果的に攻略がスムーズだった印象を受けました。
置いてきぼりも出ませんし、黙々と攻略書を睨むより教え合ったほうが盛り上がりますよね。
また意外にも6面完成を目指して席に着く参加者は女子が多く、男子はパズル展示スペースに興味が向きやすいようでした。何がそうさせるのでしょうか。
キューブは回して被って傾くもの
会場には本格的な競技卓も2つ設置されました。計測会などは行っていませんが、希望すれば自由に体験できるスペースです。
ここで突如現れた被り物の男。おもむろにキューブなんか取り出して、鬼のようなスピードで解いていきます(画像左)。芳しくないタイムに不満そうな顔をしているはずが、被り物の角度のせいでドヤっているようにしか見えません(画像右)。
正体は元日本チャンピオンの佐島さんでした。私も被らせていただきましたが、内部がしっかり作り込まれていて実は抜群の装着感です。制作過程を自身のブログで公開されていますので、こちらもぜひ。
攻略書の疑問点
さてそんなこんなで進めているうちに、使っていた6面完成攻略書に1つ疑問点が生じました。ここからは長いものにぐるぐる巻きにされてきた私が、大きいところ(tribox)に若干楯突く話になりますので慎重に書きます。攻略書の引用掲載はしませんので、お持ちの方は片手にお読みください。執筆時点で現行の第5版です。
ステップ2の終了時点で神解法デイジーメソッドによりD面に白クロスが完成するわけですが、ステップ3で突然キューブを上下にひっくり返し、完全一面を作ります。そして直後のステップ4でまたひっくり返す作業が入り、結局白がD面のまま6面完成まで駆け抜ける構成になっています。つまりステップ3の時のみ白面が上に来ていることになります。
経験者であればスルーしてしまいそうなところですが、どうやらキューブを初めて触る人にとっては、このひっくり返す行為自体がかなり混乱を招くようです。それもそのはず、一層回しの手順すら首をひねりながら一手ずつ実行する人たちに、見ている世界が文字通り180°変わってしまう動作を強いているわけです。無理もありません。
それを知ってから、私はこのステップ3をD面クロスのまま行う方法で教えています。今のところ全く問題はありません。せっかくD面にクロスが作れるデイジーメソッドを導入したのに、1ステップだけわざわざひっくり返すのはどうしても違和感を覚えます。完全一面が出来上がる様子を確認しやすいから、ということなのでしょうか。
これは翌4日に私が参加した東海スピードキュービングレクチャー会の一部でも話題に上がっていますので、分かっていただける方も少なからずいらっしゃるのではと思います。
あくまで"疑問"に思っているだけですので、私の解釈が間違っていればぜひご教授いただきたいです。
おわりに
書き終わってみればこの長さ。たった3時間のイベントなのに、この日の私はよっぽど楽しかったようです。
受付でとっていた参加者名簿によれば、来場者数は300名を超えていたと聞きました。西南部中学校は全校生徒600名余りとのことですので、土曜にも関わらずその半数が訪れ、キューブを持ち帰ったことになります。そう考えるとすごい。一番人気という噂もあながち大袈裟ではなかったのかもしれません。
昼食時に外に出てみると、キューブを持ちながら屋台を回っている姿が多数見られ、「キューブの人だ!」と寄ってきてくれる参加者もいました。6面完成を見届けた時はもちろんですが、こういった瞬間も嬉しいものです。また機会をいただければ、ぜひ次回も参加したいと思います。
では、またお会いしましょう。